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『新型コロナウイルスに関する提言:第11報』

オミクロン(Omicron:ο)株 その1

既報のとおり、2019年末に中華人民共和国武漢でエピデミックとなった新型コロナウイルス:SARS-CoV2(武漢株:標準株)は、わが国においてもダイヤモンドプリンセス号内で小規模なクラスターを形成しましたが短期間で終息しました。

しかし、ヨーロッパ各国に拡大すると変異しつつ感染が広がり、とくに英国で検出された変異株:α株が瞬く間にパンデミックとなりました。SARS-CoV2はその後も変異を繰り返し、WHOが懸念すべき変異株(VOC:variants of concern)と指定しただけでもα株→β株→γ株→δ株となり、波状のごとく全世界の人々を脅かしてきました。

わが国でも同様(図1)で、他国に比べ感染者数が少なかったとはいえ、人々を極度な不安に陥れ、生活の基盤を揺るがし心身共に疲労困憊させてきました。最も感染者数が増大し医療崩壊を招いたδ株は2021年8月20日をピークに9月中旬以降、急速に減少しました。その理由は必ずしも明確にされていませんが、ウイルス学的な要因と宿主側の要因が重なって生じたものと考えられています。

SARS-CoV2 δ株の感染者急減は、約2年にも及ぶ制約から精神的な解放を導き、実生活も日常に戻れると期待していましたが、2021年11月、再び新規変異株が南アフリカから報告されるやいなや、あっという間に全世界に広がりをみせています。同年12月初旬現在、わが国でも4例が確診され世界の53の国と地域に広がっています。
SARS-CoV2 omicron株はこれまで以上に感染力が強いことから、WHOも5番目のVOCに指定しました。
本掲示板ではomicron株を理解して頂くため、以前にも掲示したSARS-CoV2感染・複製・放出の過程を復習して頂きたいと存じます(図2)。

ウイルスは他の(微)生物と異なり、細胞膜や小器官を有さず塩基(遺伝子を含む)とそれを包むタンパク質のみから構成されており、他の(微)生物に感染しその代謝を利用することによってのみ生存することができる高分子物質です。したがって、ウイルスが生存するためには感受性細胞に効率よく感染することと、感染した細胞内で塩基や被覆タンパク質を複製・合成し続けることです。

コロナウイルス属の特徴はプラス鎖RNAウイルスで、最も長い塩基(約30000)を有することであり、SARS-CoV2も例外ではありません。図2のように感染成立後、細胞内で塩基を複製しますが、塩基が長く変異を生じやすいため、非構造領域(ORF)にはnsp14と呼ばれる修正領域を有しています。また、構造領域(spike領域)には、SARS-CoV2独特のアミノ酸配列RRARが存在し、宿主のFURINなどを活性化させ効率よく複製を行うことなどが知られています。
これまで感染に重要な役割を果たすspike領域の変異が注目されてきましたが、感染性のみならず重症度、生体の免疫反応、ワクチンや治療薬などを確立するためには、構造領域、非構造領域を含めた全領域の遺伝子解析を行い、生体反応(免疫)を併せて解明しなければなりません。ちなみに図3に当クリニックで経験したδ株の全アミノ酸配列を対照にomicron株の配列を比較しました。これまでと違って全領域に著しい変異が生じており、

これをGISIDおよびNextstrainの系統樹を簡略化して作成しても、omicron株はδ株をはじめとするこれまでVOCに指定された他の株とかなり離れた位置にあります(図4)。これらからも今まで以上に改めて基礎的・臨床的意義を喫緊の課題としなければならないと思います。

わが国にSARS-CoV2変異株の感染者が発見されて約2年、PCR、mRNAワクチンなどのOne-phrase Politicsが飛び交い、「小泉改革」とそれに引き続き「アベノミクス」は感染症対策の遅れに繋がり、かつて世界に誇ったわが国の科学の凋落が露呈したばかりでなく、医療崩壊の現状が顕在化し、日本医師会をはじめとする医療界の低落などが表面化し、SARS-CoV2の対策は他国の研究に依存せざるを得なくなったことによって情報が錯綜し、未だ国民の不安は拭えません。

しかし、悲しむなかれ、わが国ではコウモリを宿主とするコロナウイルス属に関する研究は古くから行われ、わずかの研究費に耐え現在も真のウイルス研究者の努力が地道に続けられています。

今こそomicron株の感染拡大阻止するためには、各種報道や政策に一喜一憂することなく、毅然としてこれまで学んだ感染症対策(三密、マスク、手洗い、換気など)をより一層強化することと、わが国の研究者を育てるための支援を行うことに尽きると思います。

2021年12月 理事長 日野 荘一郎

医療法人社団風韻会 デルタクリニック

デルタクリニック ※1 は、2001年11月、サンウィンズビルを新築。

当時わが国では稀少であった肝臓病の診断と治療を専門とする診療所を立ち上げ、同時に地域医療に貢献するため内科全般の疾患についても診療を行い、発熱外来を設けるなどして かかりつけ医 ※2 としての責務も担ってきました。

本年2020年11月で20周年を迎えることができました。

これを機会にホームページも一新させていただきました。

理事長(日野荘一郎)からのご挨拶は別途掲載しておりますので是非ご覧ください。

※1 デルタクリニックの由来

デルタクリニックのデルタは、ギリシャ語のアルファベット第4字delta( Δ 三角)に因んでいます。

一般に、三角の図柄は様々な組織や機構などの階層を表現するヒエラルヒー(Hierarchie:ドイツ語で職務や人員の上下関係)として汎用されていますが、デルタクリニックは職員がチーム医療に徹して、患者さんに最良の医療を提供する意味に解釈して命名致しました。

※2 かかりつけ医とは

なんでも相談できる上、最新の医療情報を熟知して、必要なときには専門医、専門医療機関を紹介でき、身近で頼りになる地域医療、保健、福祉を担う総合的な能力を有する医師。

日本医師会・四病院団体協議会合同提言 2013年8月8日